先週、松本の炭焼き師、原伸介さんに実に10年ぶりに再会することができました。
そして、念願だった信州産の広葉樹を伝統的技術で焼いた信濃白炭と木酢液「森のしずく」を店頭で
取扱わせてもらえることになりました。
原さんの信濃白炭との出会いは、飯田市のてくてくさんに勤めていた僕がまだ20代の頃、お店で地元の良質な
炭を取り扱っていて、当時「炭焼きを伝える」に情熱を燃やしていた原さんは毎月のように炭焼き仕事の手記を
書いていて、お店の通信として発行していたことに始まります。毎月読み、実際に炭を使い木酢液を使い、
あまりに感動した僕は、思い余って電話を入れ、炭焼きの現場に行かせてもらえないかと頼みました。
ところが返ってきた返事は「今現場には一切人をいれていない」というつれない返事。
取材も多く、いろんな方がやってくることに疲れていたことと、お願いしたのがお正月明けのまさに炭焼きの
真っ最中。これは無理かとも思いましたが、「販売している店の店員として、これはなんとしても見たいのです」
と食い下がったところ、少し時間をと仰った後、ものすごく丁寧な炭焼きの山への地図を僕の自宅にFAXで
入れてくれたのです。嬉しさと緊張感でいっぱいでした。当時7年目の炭焼き山。毎年のように違う斜面から
原木を伐採していたので、木の成長する様子が手に取るようにわかりました。里山に人が入るとはこうゆう事と
感動しました。それから毎日書いている炭焼きの日記を見せてくれました。伐採した木のこと、煙の様子、
木酢の味まで、その日々の変化、毎日の小さなことまで記入されてあり、自然の毎日違う気候や、条件の中で
いかに良質な炭を、確実に作り出すかが記してありました。山からの帰り道、いつか自分の店に原さんの
商品を卸してもらいたいと夢に思ったのはもう13年前のことです。
先週お会いしたとき、原さんは炭焼き20年の今、一番最初に斧を入れた場所に戻ってきたとき、成長した
その木にもう一度斧を入れ、思わず涙が出たと話してくれました。山に生きたくて、その方法を模索し、
そして松本で師匠に出会い、炭焼きに触れ、その技術に惚れ、それを学び生業としました。一心に技術を
高め、全国の後継者のいない職人から技を学び、ぜひ伝えて欲しいと言葉を受け、必死に向き合ってきた事は
本人が後に書いた様々な書籍や講演内容から知っていました。そんな原さんは、炭焼きを伝える情熱が少し
落ち着いた後、炭焼きを楽しみたいという思いが強くなりすぎ、楽しめず逆に苦しんだ時期もあったそうです。
ですが、今は本当に楽しい。今までで一番炭焼きを楽しめていると笑顔で話してくれました。
この笑顔がたまらない人なんです。ぜひ会いにきてください。